ミュージカリティー

音の表現とは

音楽をよく聴けというけど

聞いただけじゃ、音楽と一体化しない

音を聞いたら、その音を表現するリードができないとだめ

音の表現は、いろいろだから

リードもいろいろできないとだめ

音を表現するレッスン

どこで踏むか

どこで強弱を付けるか

どこで溜めるか

歩幅の大きさは

動きのスピードは

これを覚えてやろうとしている限りは無理

音を聞いて自分が勝手に動くことではない

一人ダンスなら、それでよし

聞こえた音に合わせて勝手に動けばいい

タンゴは二人で踊るものなので

これは最悪になる

また、同じ曲を聴いていても

どんな音が響き、どんな感情なのか?

ふたりには違いがある

男性はリズムをメインに聴くのに対して

女性はメロディーを中心に聴いている(と言われている)

スピーカーから流れている音楽ではなく

相手に流れている音をキャッチする

相手のカラダを通して音をキャッチする

キャッチできたら、その音を表現する

そうすることでふたりの一体感が出る

曲に合わせて表現を変える

ひとつひとつの音を表現するのは上級者なので

まずは、曲調に合わせて、まったく違う踊りができるようになればいい

・やわらかく、静かに踊る曲

・スピード感あり、ガンガン踊る曲

・ためてためて感情たっぷりに踊る曲

この3パターンができるようになればだけど

これを1人ではなく、ペアでできるようになること

それがタンゴになる

確かにリズムはその通りなんだけどなにか違う

たとえば、ダブルテンポ

イメージとしては

テンポアップして進みますというリードを送って

歩幅を小さく

タ、タ、タで山を駆け上がって、また降りてくる感じ

教科書的には正しいけど

でも、なんか滑稽に見えることがある

それは、ふたりの一体感が出ていないから

ここまで来ると、もう教えてもらうというレベルではないような

音楽と一体となったときの感覚

テクノやアンビエントであれば

血液が流れる速度でリズムを生成し

カラダと音が一体化しトリップするとか

タンゴの場合は

それがペアで起きている状態

一体化しているときは

集中していて、深い呼吸になっている

無の状態で脱力している

頭の中で考えなくても、自然とカラダが動いている

タンゴトリップの完成

そのほうがタンゴ感が出るでしょ

要は、タンゴ感として何を持っているか?

焦らすように足を運んでいくとか

そういう思わせぶりなタンゴ

好きですか(笑)

「焦らす」と「ゆっくり動く」は違うので注意

ただゆっくり動けばいいというものではない

同時に呼吸を合わせていく必要がある

足を集めながら徐々に息を吸っていく

息を吸い込むことでカラダを膨らませていく

カラダが膨らむことでゆっくりと吸い寄せられてくる

すごくすごく小さなリードでスピードを調整しながら

その動きが止まることはなく、微かに動き続ける

その微かな動きを共有しながら踊る

単に動きがゆっくりなのとはちょっと違う

同じ曲の聞こえ方が違ってくる

初心者時代と10年やり続けた後では

同じ曲でも、聞こえた方が全然違う

今まで聞こえなかった音が聞こえるようになる

こんなフレーズが入っていたのかという発見がある

そのフレーズを踊りで表現するみたいな

音で遊ぶようになれれば一人前

音楽と踊りの流派(スタイル)

踊りにも流儀があって、それにより流派が分かれる

そもそも強いスタッカートは表現しないという流派

タンゴの踊りには通常使われないピアソラの曲で踊ることをよしとする流派など

ただ、こだわる部分が違うだけでタンゴの基本は同じ

これが、タンゴの不思議なところで、かつおもしろいところ

本物のタンゴとはなにか?

他人と同じ踊りをしない

定義はいろいろだと思うけど、この言い方が好き

本物が一人居て、みんなそれを真似しているだけ

ミュージカリティーも同じ

真似てしているだけでは、ミュージカリティーにはならない

リーダーには、哲学やビジョンが必要

真似っ子では本物のリーダーにはなれない

ミュージカリティーの言語化

まずは、音楽をリズムやメロディーのブロック単位でわけて、そこで1つの動きを作っていく

リーダが踏むリズムとフォロワーが踏むリズムをそれぞれ区別して踊る

ブロックでは、リーダーのリズムで動き始めて、最後はフォロワーのリズムで締める

その繰り返し

1歩ずつを考えていたり、シークエンスで捉えていたりするとミュージカリティーにならない

コネクションを維持しながら、タンゴの基本的なリードの仕組みでリードしていく

基本的なリードの仕組みは

胸から動いて、最後は足に達するという仕組み

つまり、胸の動きでリードすれば、必然的に最後は足につながっていく

上なのか、下なのか、後退なのか、前進なのか、回るのか、サイドなのか、ピポットするのか

それを胸のリードで伝える

意外に種類は少なく、すべてシンプルだったりする

胸リードは、足を動かすための準備が整えるためにするもの

その整うまでの時間も、ミュージカリティーの宝庫

整った状態を双方が共有し

胸が上がっていれば、止まるリードだろうし

その場で絞りを続けるなら、オチョからの、前進や後退になるだろうし

逆に、絞りがなければサイドという感じで

胸の動きから、次の1歩が必然的に成立していく

動くとこで、ミュージカリティーと思っている人が多いと思うけど、たぶん違う

動くまでのプロセスがミュージカリティーであって

たとえ、それが大きな1歩でも、小さな1歩でも、その1歩は結果にすぎない

整った状態のタイミングを音楽に合わせることで

その合わせるまでの時間こそがミュージカリティーになる

調整のプロセスの時間をすごく小さく刻むとか、長く深くするとか、そういうことだと思う

アドルノはミュージカリティーか?

アドルノは、調整までのプロセスで行われるものだから、ミュージカリティーだね

ただ、それを無視したアドルノは、自己中なだけで、逆にミュージカリティーを壊す

ミュージカリティーは2人で行なうもので、1人で行なうものではないわけだから

技術力とミュージカリティー

タンゴのテクニックや技術力がないが

音楽を魅せるタンゴは踊ることはできる人は居る

それは、ミュージカリティーだと思う

小難しいことは何も考えずに、自然とできている人なんだと思う

もうひとつの視点は

2人が音楽を通して通じ合うことのみに集中してタンゴを踊る

集中することは

技術やスキルの違いは関係ない

できる側が相手に合わせればいいだけのこと

逆に、技術やスキルを優先して

自己中で踊っていれば

その踊りは最悪なタンゴだと思う

リズム

どのリズムを踏むかは自由

どのリズムで止まるかも自由

踏まないリズムがあっても、当然いい

リズムのスタートがあれば、リズムの終わりもある

小さなリズムもあれば、大きなリズムもある

強いリズムもあれば、弱いリズムもある

浅いリズムもあれば、深いリズムもある

流すリズムもあれば、溜めるリズムもある

音楽家としてのリズムもあれば、踊る人としてのリズムもある

音楽を聞いていれば、この曲はどんなリズムなのか、わかる

それにもかかわらず、どんな曲でも、いつも同じリズムのパターンでタンゴを踊る

そこから、早く脱却しないと

脱却する方法は

リズムに合わせて踏むところじゃない

踏むまでの時間をコントロールするところにある

ミュージカリティーの可視化

今は便利なものがある。それはYouTube

Don Juanで、いろいろな踊りを見るといいかもしれない

それぞれの違いがミュージカリティーなんだと思う

ミュージカリティーこそ個性であり、自己表現だと思う

〇Esref Tekinalp & Natacha Lockwood

〇Ariadna Naveira y Fernando Sanchez

○Mariano Chicho Frumboli & Moira Castellano - Don Juan

○Gustavo Naveira y Giselle Anne - Don Juan (Tangomagia)

まず、わかるのが、4組とも、最初の一歩が全然違う

それだけで、ミュージカリティーは成立している

どんな曲でも、最初の1歩は、サイドからという、いつも同じなら、、

ミュージカリティーからは、すでに落第かもしれない

4拍子を1ブロックでとらえていない

自由自在に、どんどんブロックの単位が変わっていく

ちなみに、ブロックとは1つのミュージカリティーの単位

1つの動きが、始まってから終わるまでの最小単位

4画面並べ同時に再生してみると

ミュージカリティーって音楽性というよりは

その二人のタンゴ表現だと思うようになる

音楽はおまけではないけど、主役は2人

2人がどんなタンゴを踊るのか?

それがあるかないか?

という結論になる

一斉に回り始める

タンゴの曲のフレーズには、「進む」と「止まる」と「回る」がある

回るは、ヒーロというやつ

曲のある部分になると

全員が一斉にヒーロをしだす

音楽がヒーロをやれと要求しているからヒーロなんだけど

美しく回れるかを争っているだけで

これは、ミュージカリティーとは別物だと思う

なぜならば、全員が同じことをしているから

ミュージカリティーは個性であり、自己表現だと思うから

フォロワーを待つ

終わるのを待つ、次の姿勢の体制が整うまで待つ

とにかく、フォローを待つことができなければ

それは自己中の踊り

ペアダンスではない

待つことは、ミュージカリティーの第1歩である

フォロワーも

リーダが想定している時間内で完結するように

早くても、遅くてもダメ

双方が同じタイミングで、その瞬間を共有する

そこから、ミュージカリティーが本格的に始まる

音楽に合わせるカミナンドは

タンゴは、「カミナンドにはじまり、カミナンドに終わる」という名言があるように

それが、沁みるようになるまでは5年以上は必要かと

ミュージカリティーも簡単にできるようにはならない

方向性だけ間違えず意識して、コツコツやるしかない

止まる(音楽、静止)

音楽に合わせて、止まることもミュージカリティー

一瞬で止まることもあれば

じっくりじわじわと止まることもある

さらに

止まっている状況が絵になれば

それこそ、何かを表現している世界があって

それこそミュージカリティー

パッションのエネルギーを表現する

息を吸い込むだけでも、エネルギーはためられる

息を吐いたときに、エネルギーは放たれる

それだけで伝わるリードになる

必然的に

息を吸い込めば、胸は開いていくし

胸が開いていけば、アブラッソに変化が出てくる

それに至っていく時間も、ミュージカリティー

ミュージカリティーは大人のタンゴに見える

溜めがないタンゴは幼稚に見える

溜めるミュージカリティーができるようになれば

大人のタンゴに見える

溜めには

「うん、ぱー」と、溜と開放がある

溜めたら開放する

開放したら、今度は収束する

という2つのプロセスが存在する

もっと細かく解剖すれば

そこには4つ意識するポイントがある

溜めている状態を意識してみる

開放される瞬間を意識してみる

開放の終わりを意識してみる

収束の開始を意識してみる

とくに

放つエネルギーが長ければダイナミックになるし

放っぱなしではダメだし

放つためには溜めることが必要だし

すべて繋がって、流れている

双方が

4つの点を共有して動ければ完璧

カラダの動きとミュージカリティー

「カラダが動く量」×「動くスピード」=ミュージカリティー

掛け算だから、そのパターンは無限大、幅がある

この2つをコントロールすることで

ミュージカリティーが生まれてくることは確か

逆に、これ以外では、生まれないと思う

最初は、タンゴは4拍子だから

動く量もスピードでも、全部一定からスタートする

それを正確にできるように練習していく

それを崩すことから、ミュージカリティーが始まるから

そこに大きなボトルネックがある

誰も崩せとは教えないだろうし

さらに文章で説明しているのも読んだことないし

そもそも教えることは難しいだろうし

自分で意識してやっていくしかない

楽団による踊りの違い

ダリエンソに代表されるリズム系のタンゴ

デサルリに代表されるメロディー系のタンゴ

当然、踊り方が違ってくる

もし、同じ踊りしかできないとなれば

それは、ミュージカリティーがないということになる

刻むのはリズムで、メロディーはミュージカリティー

リズムは足で表現し、メロディーはカラダ全体で表現する

という解説を聞いて

それぞれの楽団用のシークエンス的なものがあって

それを練習するという流れ

これが、ミュージカリティーのレッスン

たぶん、これじゃダメだと思う

ミュージカリティーにはなっていかない

楽器とミュージカリティー

ヴァイオリンはヒーロ

バンドネオンは歩いたり男性の遊び

ピアノは女性の遊び

こういうことは覚えない方がいいと思う(笑)

それよりは

小節の終わりはミュージシャンが遊びを入れる時間

その遊びに合わせたショートステップをしたり

アドルノを入れたり

遊ぶ場所、自己表現する場所を

その曲から切り抜いていきながら

切り抜いた時間を踊りで表現できるようになれば

かなりイケてるはず

3つのテンポの違い

ティエンポ(1,2)

ドブレ・ティエンポ(1,2,3)

メディオ・ティエンポ(1,2/たんたんたん)

コントラ・ティエンポ(裏打ち)

ティエンポは、スペイン語の時を意味する

本質は、時をどう刻むかであって

これも覚えない方がいいと思う

メロディーをどう表現するか

リズムは足で表現するかもしれないが

メロディーは、足で表現するのではなく、カラダ全体で表現することになる

そして、リズムとメロディーのリードが混在されることで

ミュージカリティにつながっていく

では

メロディーをどう表現するか?

何を自己表現するのか?

まずは、メロディーに呼吸を合わせていくところから

ゆっくり呼吸したり、早く呼吸したり

呼吸の仕方でカラダの反応に違いが出てくるので

そのカラダの反応を上手く使ってリードにつなげていく

たとえば、深くゆっくり呼吸をすれば

それだけ時間が掛かる

その間は

ずっとコネクションはキープされているし

少しずつ、ゆっくりリードを伝え続けている

当然、呼吸の終わりは

メロディーのブロックの終わりに合わせる

それがメロディーの時間を、表現することにつながる

ダイナミックな動きが入ってくるとミュージカリティーらしさが増す

リーダがクロスすることで、絞りが生まれ、そこにスペースもできる

そうすることで、ダイナミックな動きが可能になる

また、反対方向に動くことでも、ダイナミックが動きになる

スペースを作るための動きを覚えていくとか

反対方向の動きを覚えるとか

ややショーぽいのりけど

それをなにげなく、かつ安全にミロンガの中でできるようになればと