タンゴDJ

●タンゴDJなる存在

ミロンガで選曲する人をタンゴDJと呼ぶ

DJは奉仕する人、ミロンガのスタッフである

ミロンガ全体のことを考えて動かなければならない

1タンダは3、4曲の構成で10-15分程度

タンゴ、ミロンガ、ワルツという3種類のタンゴがあり

同じ楽団や同じ曲調をつなげていく

どんなタンダにするかがDJの腕の見せ所

ただ最近は、ネットのおかげで高速道路理論ではないが洗練が進み

どのDJも選曲は似たり寄ったりだったりする

●ミロンガ選曲での定番

たぶん、ミロンガでかかる定番は1000曲ぐらいだと思う

1つのミロンガで、時間にもよるが、70-100曲ぐらい掛かる

タンゴの曲は、曲があって、楽団があって、歌い手が居る

同じ曲を違う楽団が演奏すれば違う曲になり

同じ曲の同じ楽団で歌い手が変われば、また違う曲になる

たとえば、カナロという楽団は、ビジネスマンと言われているように

同じ曲で歌い手をどんどん変えて、どんどん曲を生み出していく

当然ながら、この一曲に掛ける的な一発屋さんの名曲もある

また、タンゴと言えば、ピアソラは有名だが、ミロンガではほとんど掛からない

踊る曲というよりは、聴くためのタンゴだからである

●オルケスタの特徴

スタカート→ディサルリ

リズムの王様→ダリエソン

フレセド→サロン、上品

名門→ミゲル・カロ楽団

最大のバンドネオン→トロイロ

サービス系→ローム楽団、カナロ楽団

ジュンバ、不規則なリズム→プグリエーゼ

●ディサルリ

均質ではっきりした音でありながらメロディアス

古いタンゴと新しいタンゴをミックスした

バンドネオンはリズムカルに徹している(弱い)

バイオリンが色をつけている、強い

ディサルリはオーケストレーションが強いので

楽器のソロもない

最後の盛り上がりもない→静かに終わる

歌手が違っても、同じ感じが多いのが特長

●ファンダリエンソ(イタリア系)

30年代のタンゴのベースになってい

スタイルは変えない

どんどんアゲアゲにしていく

楽器ソロ部分をちょいちょい入れてくる

バンドネオンが強く、リズルカムで早い

一番踊りやすい(ビキナーからアドバンスまで全員踊れる)

●アニバル・トロイロ

トロイロには、プグリエーセやディ・サルリのように一聴してわかるスタイルはないかもしれない

低音を使う、ゆったりしたスタイルでテンポを遅くする

トロイロは「歌(=歌手)+オルケスタ」という表現形式を確立した

歌手がメインで、楽器がバックで支える邪魔しない

歌手で、だいぶ雰囲気や違う

センチメンタルに行くときはトロイロを使うといい

40年と60年で大きな違いがある

●ミゲル・カロ

偉大なミュージシャンの集まり

フレセドの影響を受ける

落ち着いて洗練されたエレガントなサウンド

シンプルでリズミカル

踊りやすいため、ミロンガでも結構かかる

●フレセド

疲れたときでも、なんとか踊れる

●カナロ

ビジネスマン(スタイルは常に新しいものを採用していく)

同じ時代でも、異なるオルケスタを持っていた

ミロンガ二拍子を確立した(早いミロンガとゆっくりなミロンガがある)

ユニゾンとシンプルな和音

●プグリエーゼ

踊るための音楽にこだわらなかった

質のよい曲を作ることにこだわっていた

ゆえに、踊るためには、かなり複雑な曲になる

ジュンバ(擬音)は、すごくアクセントが強い曲

不規則なリズム(テンポは一定ではない)

シンコペーション

ハーモニー

複雑なメロディー

一晩で1回入れる程度、最後の方に入れる

●アンヘル・ダゴスティーノ

ダンゴステーノとのコンビはTheタンゴ

歌詞がアルゼンチン人に響くらしい(思わず歌ってしまう)

ミロンガではよく使う

味がある

リズム強調

●ヘドロ・ラウレンス

エネルギッシュ、フレージング

バンドネオンの名手(バンドネオンの早引き)

ピアソラがこの楽団が好きだった

●ビアジ

ダリエンソのピアニストだった

ファン・ダリエンソのスタイルを継承

リズムカル、神経質、落ち着かない

エネルギーが内側に入ってくる感じが一番好き

●ルシオデマーレ

感傷的なタンゴ

感傷的に踊る

●タンウゥリ

迫力のある、ダンサブル音

メランコリック

タンウゥリが来たら、みんな歌手を聴く

●アルフレド・デ・アンヘリス

ダンス前提のタンゴ

ツインボーカルを積極的に取り入れる

いろんなリズムでやることで有名

●フリオデカロ

流行っているもの、みんなが喜ぶものというよりは

音楽大学でちゃんと勉強した人のタンゴ

そういう意味で、難しい複雑な曲を作る傾向がある

DJでは、あまり使わない

●継承

ブグリエーゼ→Color Tango

ダリエンソスタイル→ビアジLos Reyes Del Tango

ミゲルカロ→Orquesta Tipica San Souci

ディサルリ→Tipica Gente De Tango

●曲のバリエーション

1、分間になっている拍数をBPMと呼ぶ/甘美)なタンダ→カナロ

2、情熱的/ドラマティック(どんどんあがっていく)なタンダ→ブグリエーゼ

3、遊び心のある「リズミカル」なタンダ→軽い→ビアジ

4、エネルギーに満ちた「リズミカル」なタンダ→スタッカートが強い→ダリエンソ

5、美しい、メロディアス→歌なし、歌あり

6、激しい、テンポが早い

7、複雑な音→凝っている

8、新しい→エレクトロニクス

●DJとしての選曲

退屈を避けることがとても重要

似たようなタンダを続けない

タンダで抑揚を付けて飽きさせない

●タンダの抑揚バリエーション

1)RITMICO - MELODICO(リズミック - メロディック)

2)FAST - SLOW(早い - 遅い)

3)GOOD QUALTY - BAT QUALTY(高品質 - 低品質)

4)SINGER - NO SINGER(歌手モノ - インスト)

●タンダの構成

1タンダは、3、4曲、同じ楽団で、同じテイストのもの

1セットは6タンダ70分(抑揚を出す)

tango→tango→Vals→tango→tango→Milonga(1セット70分)

T(Slow)→T(Fast)→V(+)→T(Fast)→T(Slow)→M(++)

Slowl:ゆっくり、Fast:早い

Mが一番早い=疲れる

歌モノを2タンダ続けることはしない

メロディアスなものは、Milongaの前後に持ってくる

リズミックなものはValsの前後に持ってくる

これにより、スピードの差が出て、タンダの違いに抑揚が出せる

また、パターン化されていることで、お客さんも計画を立てやすくなる

●客層とDJの関係

初心者が多い場合は、踊りやすいテンポが一定の曲がいい

はじめて踊る人の場合は、誰でもが聞いたことがあるような有名な曲がいい

いつものメンバーで、はじめて踊るような人がいないミロンガでは自由でいい

●なぜ、1タンダの中では同じ楽団にするのか

タンダ1曲目のイントロが掛かった段階で

このタンダは、どんな感じ選曲になるのか、それをお客さんも知っているから

それにより、この選曲なら、誰と、どう踊るかを想定することができる

また、これは、苦手だから、踊らずに休むとか

お客さんが行動しやすくなり、楽しみやすい

逆に、いろいろ想定外を入れると、戸惑いや怒りに

逸脱しないことによる、安心感を作っていくということが大きいい

逆に、逸脱することにより、わくわく感や発見など狙ってはいけない

重要なのは、また来ようと思って帰ってもらうこと

このミロンガは楽しかった、楽しめたと思って帰ってもらうこと

●なぜ、後半に行くほど、いい感じの曲になるのか?

早く帰らせないようにするため

常に期待させ続けることができればベスト

きっと、これから、自分の好きなあの楽団が、掛かるはずと

●タンダの1曲目でフロアーに出させる選曲を

1タンダの中で、1曲目を選ぶときに、とくに気をつけていることがあるか?

1曲目は、ベストをかける

3秒聞いて、踊りたくなるような曲がいい

タンダ内は、だんだん早くなるか、だんだん遅くなるかにしていくようにする

●1タンダの中の曲順

タンダの中で、だんだんと踊りを調整していくのがミロンガでの踊り方

タンダの1曲で、相手のレベルや癖などを把握して、タンゴの踊りの構成を決めていく

なので、タンダの1曲は、調整しやすい曲がいい

●ミロンガの開始時間では、配慮は必要か?

ウキウキでミロンガに来ているわけだから、暗い曲より、テンポがいい曲いい

ウキウキしている気持ちをそのまま持続させてあげる必要がある

1セット目(6タンダ)が終わるぐらいまでは、この法則でやる

●朝4時にミロンガ掛けても誰も踊れない

疲れている

もうそろそろ終わりが近い

であれば、しっとりした曲がいいはず

ミロンガの終わりに、テンポの速いミロンガの曲は要らない

タンゴ2-3タンダ掛けたら、ワルツかミロンガというパターンだけではない

●歌詞の意味はどれくらい考慮するか?

これは、日本でという限定の話

歌詞の内容がわからないという前提の話

音感や踊りを重視していて

歌詞の内容まで考慮していない

反体制とかをテーマにした曲も選曲に入っている気がする

また、振られた悲しい心情をテーマにした曲で楽しく踊ってしまう気もする

歌詞がばっりりわかる人達にとっては、不思議な世界を作ってしまっていると思われる

●ポリリズム

「ポリリズム」っていうのは「複数のリズムが同時進行で演奏される事」

踊りが一気に難しくなる

●BPM

1分間になっている拍数をBPMと呼ぶ

BPMを変えられる機材が必要だし

タンゴDJだと、敢えてBPMを変えて曲を掛けることはないと思う

●クラブのDJ

DJやってみたいと思ったのは、クラブのDJを見ていたから

自分の知らない、いい感じの曲を、次から次へと掛けていく

自然とカラダも動く

それがDJのやる仕事だった

クラブに行けば、酒は飲むし、踊るし

ひたすら、いい選曲をして、いい雰囲気にしていく

気持ちいい空間を創り上げていく

このノリでタンゴのDJをやると

ダメだしされる

タンゴのDJは、そういう世界だったりする

●DJのキャラ(個としてのDJ)

同じ選曲なら、いろいろなDJは不要

DJごとにキャラがあった方がいい

また、一度できたキャラは崩さない方がいい

キャラの出しどころは、選曲

つまり、曲のチョイス

どのDJも似たり寄ったであれば、AIでいい

ちなみに、YouTube musicのレコメンドだけで選曲したことあるけど

すごくいい感じ

目指すべきは

今日はDJはいいからミロンガに行く

間違いは、DJはアーティストを担ってはダメだけど

客が呼べるDJは、この限りではあらず

DJを目当てに来るので、DJが主役であり、アーティストであっていい

●RONDA DE ASES(エースのラウンド)

4曲まったく違うオルケスタで掛ける

しかし、その中に共通点がある

敢えて、パターンのストラクチャーを壊すことをやる

基本を知っているうえで、あえてチャレンジする

そういうDJの方が好き

今のタンダは失敗したと思えば

次のタンダは大定番タンダでごまかすとか

失敗ダメージはいくらでもコントールできる

●ミロンガを楽しむためには

この選曲だったら、誰と踊ろうという選択肢が多いほど

どんな選曲だろうが、楽しむことができる

それに、気づいていない人が多い

ミロンガがつまらなかったというのは

これがないため

目指すべき方向性は、ここだと思う